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タイトル |
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陰翳礼賛 |
著者 |
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谷崎潤一郎 |
出版社 |
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中央公論社 |
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表題の文章では、漆器や蒔絵、金襖や金屏風、金襴の袈裟や織物も羊羹までもが、行燈や燭台の時代、闇の中で味わうからこそ、その美しさ、美味しさを深く感じ得るのではないか、という話が収められている。トイレや建築、能など様々なものについてその陰翳に思いを馳せている。
もちろん、逆戻りもしてやり直すわけにはいかないとは分かりつつも、日本の美、「さび」について語るのを、初めて読んだときは目から鱗が落ちた。桐工芸の、とくに昔の桐火鉢の豪華な金蒔絵もまた、電気のなかった時代、蝋燭の明かりだけの薄暗がりの中でおごそかに美しく輝きを放っていたのではないかと想像してみる。今のビカーと明るい蛍光灯の下では価値の変わるものがある。
当たり前のことのようだが、心に留めておかねばならない。翻訳家の岸本佐知子さんも雑誌『リトルモア』誌上で紹介している。他にも多くのデザイナーや写真家たちがこの本をすすめているのも頷ける。 |
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