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タイトル |
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宮大工千年の「手と技」 |
著者 |
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松浦昭次 |
出版社 |
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祥伝社 |
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昭和4年生まれ「技術者の人間国宝」と言われる選定保存技術保持者に認定されている松浦昭次さんが、「金剛輪寺三重塔」などの具体的な仕事についても触れながら、宮大工という仕事について詳しく語られている。
道具についての専門的な話が素人にもとても面白い。「サシガネ」というスゴイ道具。ひとつの丸太からどんな角材が取れるか、サシガネの表目で測ってそのままくるっと裏返して裏目を読むだけで分かるという。丸目で直径を測れば円周もパッと出る。尺貫法の目盛りだけでなく、ピタゴラスの定理や陰陽道の文字も刻まれている。電卓より凄い計算尺を兼ねた定規。この小さな細い棒に驚くべき先人の知恵がぎゅーっと詰まっているのです。
素晴らしい仕事というのは、聞くだけでも見るだけでも感動がある。そんな職人の技を、急激に変化する時の中で、きちんといい形で遺していくことはとても難しい。良いものは自然に残る、という考えは現代には当てはまらないのかもしれません。合い間には、仕事のほんとうの面白さとは何か、天職について、などの文章もあり、つい仕事論として読んでしまう。ひとつの道を究められた松浦さんがこうおっしゃるのです。「何が自分の天職か。いまだに私にはわかりません。だいたい天職というものにしてからが、ほんとうのそんなものがあるのかどうか、私はちょっと疑っています」って。きっと自分の興味のある目の前のことを熱心にやることの連続しかないのでしょう。「天職というものがほんとうにあるとしたら、天職のほうからやってくる。そういうものではないでしょうか」。仕事や将来に悩める若者も必読の書です。 |
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